シカゴの人種住み分けと格差の問題

シカゴに住むとまず身をもって感じるのは人種の住み分け(Segregation)の問題である。なぜこれが問題になっているか。それが所得格差、地域格差を描き出してしまっているからだ。このような「シカゴ市が抱える課題」として真っ先に話題に挙がってくるSegregationであるが、外から来た人の感覚からすると、多くの市民にとっては「蓋で隠しておきたい問題」のように感じられる。危ない地域に危ない人を集めて、自分はそこに近づかないようにする。極端に言ってしまえば、そう考えている人が多数であるという印象だ。そしてその人たちは「シカゴ市北部に住む白人」であり、危険な「南部・西部の黒人」という構図である。ちなみに、シカゴ市は東側にミシガン湖を望んでおり、当然ながら人は住んでいない。

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図1:シカゴ市の人種分布(2010年)
出展:https://chicago.cbslocal.com/2015/05/04/chicago-is-the-most-segregated-city-in-america-analysis/

上の図はシカゴ市の住民一人ずつをプロットした地図であるが、はっきりと境界が浮かび上がってくることが分かるだろう。 では、なぜこのような住み分けが起きたのだろうか。そして、なぜ今に至るまで続いてきてしまっているのだろうか。もちろん、要因は複雑に絡まっており、一概に結論付けられないが、大きく経済的及び政策的な要因が挙げられるだろう。経済的には産業構造の変化による雇用環境の悪化、政策的にはそれに対処する経済政策がとられてこなかったことに加え、特に大きな契機となったのが1950年代から半世紀続いた公共住宅政策と言われている。これらの点に関しては改めて紹介したいが、今回は現状でどのような格差が生じているか簡単に見てみたい。

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図2:シカゴ市所得分布の変化(1990年-2012年)
出展:https://danielkayhertz.com/2014/03/31/middle-class/

上図は、シカゴ市全体の世帯所得中央値に対する各メッシュ内の世帯所得中央値のパーセンテージ(ここでは本指標を"IR"と呼ぶ)を表したものである。つまり、最も濃い青色の地域の世帯所得中央値はシカゴ市全体の2倍以上あることになる。この図から、以下の理由によりシカゴ市の所得格差は拡大していることが分かるだろう。

  • 青色地域(IR>125%)の拡大(特に北部)

  • 灰色地域(75%<IR<125%)の縮小

  • オレンジ・赤色地域(IR<60%)の拡大

すなわち、富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなり、中間層が減っているのである。

この、Segregation・格差の問題は一朝一夕に解決できる問題ではないが、これから起因する治安悪化の問題は対策が急務である。先日4月2日にシカゴ市長選が行われ、Lori Lighfoot氏が黒人女性として初当選した。どのような政策を打ち出すか、期待したいところである。