都知事選候補者のYouTube活用

7月5日、4年ぶりの都知事選は小池現知事の圧勝という形で終わりました。今回の都知事選は地上波でのテレビ討論会が行われず、「主要」候補者が一堂に会したのもネット討論会のみでした。したがって、有権者が各候補者の取り組みを知りうる機会は通常の選挙戦と比べて少なかったと思われます。そんな中、候補者が自らの政策を広報する媒体として、YouTubeをどのように使ったか、見てみたいと思います。

得票数

まずは、都知事選の結果をおさらいしておきましょう。

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上位6候補得票数
上位6候補の得票数を見ても、小池氏が圧倒的に獲得しています。これだけの票を獲得していれば、当然YouTubeでも多くのファンを持っていると想像されます。

チャンネル登録者数

では、次に、この6候補のチャンネル登録者数を見てみましょう。

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上位6候補者 YouTubeチャンネル登録者数
ここで驚くのは、上位2候補の小池氏と宇都宮氏がそれぞれ千人、3千人と極端に登録者数が少ないことです。小野氏も4千人ですが、この3候補者は6月8日時点ではチャンネルを持っておらず、選挙戦に入ってから立ち上げたことが理由だと考えられます。 登録者数の多い3候補の中でも選挙期間中に登録者数を伸ばしたのが山本氏と桜井氏、逆に落としたのが立花氏でした。多くのメディアでは「桜井氏善戦、立花氏苦戦」という結果を報じていますが、ここでもその傾向が見て取れます。
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上位6候補 YouTubeチャンネル登録者数(6/8と7/5比較)

動画投稿数

では、それぞれの候補は自らのYouTubeチャンネルにどの程度力を入れていたのでしょうか。6月8日以降の動画投稿数を比較してみます。

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上位6候補 動画投稿数 (6/8-7/5)
これを見ると、最も少ない桜井氏でも1か月間で58本投稿していて、いずれの候補者も積極的に配信していたことが分かります。山本氏は143本ですから、1日2~3本のペースで上げていたことになります。

再生回数と再生率

実際の再生回数はどうでしょうか。

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上位6候補 総再生回数(6/8-7/5)
当然、チャンネル登録者数の差が再生回数の差に表れていますが、立花氏は登録者数の割には再生回数が伸び悩んだ印象があります。
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上位6候補の「再生率」
少し別の角度から見てみます。「6月5日以降の総再生回数」を「7月5日時点での登録者数」と「6月5日以降の動画投稿数」の積で割ったものを「再生率」とします。つまり、チャンネル投稿している人全員が投稿された動画を見ると100%以上になります。もちろん、登録者数は変動するため多少ずれはあります。この表を見ても、立花氏は登録者数の割には再生回数が伸び悩み、一方で小野氏と桜井氏は登録者以外の多くも動画を見たケースが多く、効果的に認知を広げたことが見て取れます。

動画の評価

最後に、動画の評価を見てみます。

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上位6候補 直近50動画の高評価率
上の図は7月5日からの直近50動画の高評価率を表しています。これを見ると、宇都宮市、山本氏、小野氏、桜井氏はおおむね高評価率は90%を超えていて、視聴者の多くが「支持者」であると推測されます。一方、小池氏、立花氏の動画は高評価率が80%を超えるものが少なく中央値が60~70%になっています。動画の中身を見ていないので決めつけられないですが、視聴者は「非支持者」が大半を占めるか、多くの人が賛同できない内容だったと考えられます。

所感

ここまで都知事選の候補者のYouTubeの活用状況を見てきましたが、小池氏の圧勝からはかけ離れた実態が浮かび上がってきました。最後に、所感です。

  • 選挙においてYouTube有権者への影響力は限定的でした(上位6候補のチャンネル登録者数を合計しても75万人程度)
  • しかし、各候補者は多くの動画を上げており、広報活用しようという意図が見られます。また、その候補者を知る上での情報も豊富だと思われます。
  • 小池氏の動画がこれほどまでに見られず、見られても否定的な反応が多い中でどのようにして支持を得てきたか、また、有権者はどのようにして小池氏の政策を吟味したか、疑問が残ります。おそらく、新型コロナウィルス対応等で日々テレビに登場したことが広報という意味で功を奏したと思われますが、YouTube視聴者においては積極的に支持をする層があまりいないのが現状と言えるでしょう。

    参照サイト

    YouTubeの各候補者の記録は、こちらのサイトから参照いたしました。