何かと問題ありなシカゴ市ギャングデータベース

今年の2月にシカゴ市長選が行われました。Chicago Tribune誌の各立候補者の「3大見解」を見ていたところ、その後当選したLori Lightfoot氏含め、「シカゴ市警察のギャング・データベースの撤廃」を挙げている人が何人かいました。廃止したいと言われるほどのデータベースとは一体どんなもので、どのような問題があるのでしょうか。

ギャングデータベースとはどのようなものか?

まず、シカゴ市警察がギャングのデータを集め始めたのは、1世紀以上前だと言われています。当時は高校の卒業アルバム等から交友関係を割り出すという、かなり地道な作業だったようです。その後、2002年に当時のRichard M. Daley市長の元でデータベース化されました。

何が問題となっているか?

不十分なシステム設計

まず一つ目の問題は、システムの設計が十分にされなかったことです。そのため、2002年にデータベース化された際、様々なソースから無秩序なままデータが集められてしまいました。シカゴ市の監査室(Office of Inspector General)のレポートによると、少なくとも18の異なるソースを使っていたとのことです。

信憑性に欠けるデータ

その結果、13万4千人という膨大な数の人がギャングメンバーとして登録されましたが、その信憑性はかなり怪しいものになってしまいました。このデータベースを使っているのは、主に米国の移民税関捜査局やFBIです。そのため、不正確な情報が誤った判断の根拠になりかねません。実際に、このデータベースに載っていることを理由に移民税関捜査局が市民を誤って取り押さえた事件が起きました。また、データベースに名前が載っていることを理由に職を失うケースも報告されています。さらに、そこに入っているのはほとんど(95%)アフリカ系アメリカ人(黒人)とラテン系アメリカ人(ヒスパニック)のため、人種差別的なデータベースと反発を受けるのも無理がありません。

このような問題を抱えるギャングデータベースですが、シカゴ市警察は、ギャングのネットワークがどのように生成し、衝突に発展するかを把握することは、犯罪の未然防止には必要、と主張しています。実際、どの程度犯罪抑止に役に立つかどうかは検証が必要ですが、情報が不正確なうちはそれも難しいでしょう。まずは、確実に正しいと判断できる情報を把握し、それをどのように取得し保存するか、設計をするところからはじめるべきでしょう。その上で、データベースに載った市民に対しては情報公開をすることが求められると思います。今後、Lightfoot市長がこのデータベースに対してどのような判断を下すか、見守りたいと思います。