都市計画に心理学・神経科学が使われる?

今や世界人口の50%が都市に住み、その数は増え続けています。この先都市はどのような姿であるべきでしょうか。この問いに対しては、もちろん正解はないでしょうし、様々な立場の方が、それぞれの視点で提言していると思います。今回は、Chris Murray と Charles Landryによる以下の問題提起に着目してみたいと思います。

“It is astonishing that psychology, the discipline that deals most closely with human emotions, is almost absent from urban policy.”

つまり、「人の感情に最も密接に関わっている分野である心理学が都市政策から欠落している」と投げかけています。実際、これまでの都市計画は建物や道路などの「ハード」を出発点として設計されてきました。「動線を良くする」「憩いの場にする」などのコンセプトでその場の使われ方への配慮はあったと思いますが、どうしても機能が優先されていたと思います。 しかし、近年の神経科学の発達によって、心理的な側面を根拠にしたまちづくりが実現される、と言われています。この神経科学の発達を先導しているのは、技術の発達に他なりません。例えば、ウェアラブルバイススマートフォンの普及によるリアルタイムデータの取得、そのデータの分析を可能にするコンピュータ等によって、街中の人の行動を分析しやすくなっています。また、Waterloo大学のEllard先生の研究では、VRを使って都市における人の行動をシミュレーションしています。 これまで神経科学の知見が活用された例としては、作業効率が上けるための労働環境の設計があります。最近では効率だけでなく、ユーザーエクスペリエンス(UX)を高めるために知見が活かされているそうです。産業界での取り組みが公的部門に応用されるケースは良くありますが、心理学や神経科学の活用によって都市計画がどのように変わっていくか、楽しみにしたいと思います。